魔術

定義

 魔術とは――
1:目に見えない力、全般を指す。
2:人の身が魔力を用いて操る現象。
3:普通には理解できないことに対する尊称、あるいは蔑称。尊称の場合は「極大術者(マスター)」を意味する「師」を用いて表現されることが多い――例)「まさに魚料理の魔術師」

――列島国家百科事典 第33版 広辞苑より――

 上記の1〜3はどれも正解である。
 が、一般的に魔術とは誰でも「遣える」ものであるために、とくに戦闘魔術や超広域魔術などがあつかえる者を指すケースが多い。
 また、「使う」ではなく「遣う」という字をあてられているのは魔術の本質がいまだにすべて解き明かされたわけではない、ということにほかならない。

 列島においては「魔術素子」と呼ばれる根源を操作することにより、現象の裏側を操るのが魔術……という定義が立証されている限界線である。

分類

※現在の国際基準は以下のとおりである。
古典元素式  古来多くの文化圏において遣われてきた火、水、土、風を差す。
 また、雷、氷、といった特定の現象に基づく魔術素子も
古くから確認されており、その抽出式、変換式も
多数存在する。
精命式 「命」に基づく素子をあつかう式。
 元素式のそれとはまったく異なり、
影響力が小さいわりには魔力を
非常に大きく使用するため
一般にはあまりなじみのない分類である。
合成式  力の変換をおこない、現実に現象としてよびだす行為そのもの
 ――つまり魔術を遣う際の工程すべて――を差す。
 一般的には魔道器に敷かれている式、
「円陣{エンジン}」を説明する言葉としても使われる。
※以下は現在における魔術のおもな各分野
戦闘魔術
<コンバット>
 魔術がもっとも発達したのは皮肉にも戦闘魔術によるところが大きく、
そのなかでも列島古式術と帝国式術を融合させた
新・列島式術は多くの成果をあげている。
 また、戦闘魔術のなかでも膨大な種別があり、
軍事でもっとも発達した制圧型から
傷もつけずに殺害する暗殺型までさまざまな型があり
その際たるものとしては特殊魔術(S・S)があげられる。※別項参照。  
治療魔術
<メディカル>
 精命式の知識と精密な操作、そしてなにより才覚が求められ、
 この魔術を遣える人間は、異変体よりもすくないとすら言われていた時代もある。
 現代においては研究が進み、多くの魔道器と術薬をとりいれた
医術という分野が急成長しているが、難解であり才覚がある程度必要なことは
変わりがなく、いまだに充分な遣い手の人数には
達していない。
錬金魔術
<アルケミスト>
 魔道器に遣われる円陣{エンジン}などは、既存の金属の魔術的な資質を操作して
素材から作られていく方式が多い。
 また、魔力を使用していないものの硬い金属ややわらかい接着剤などを作る者も
こう呼ばれることがある。
 高密度の錬金は、原則として個人ひとりで行うものではなく、
長い時間と多くの人間が協力する必要があり多くの労働力が必要な分野である。また、当列島において常に一位二位を争う生産分野であり雇用率も国民全体の30%以上(2000年度 労働庁調査資料より)をほこる。
 基本的に個人であつかえる魔術ではない。




以下は、より詳しく、とくに戦闘魔術について記したものである。

円陣 <エンジン>

 正確には「内念式魔方陣{ないねんしきまほうじん}」といい、人が魔術を遣う際に必要な座標位置を特定するための方法である。(この座標は物理的な距離や場所を含むあらゆる概念である)
 目に見えるものだけではなく、思考内、精神内――(魔道器は物質にこれらを構築して魔力あるいは魔術を収める)を含んでいる。
 魔術に遣われる円陣{エンジン}、というよりは魔術=円陣といったほうがより正確な概念といえる。
 戦闘魔術{コンバット}のおいては、自身の魔術を円陣に注ぎこむ陣、魔術の発生位置を固定する陣、特定素子を操作し留める陣、発現陣{トリガー}等があり、さらに飛翔射出型の場合には円周陣、加速陣、反動陣等……じつに多彩な円陣を組む必要がある。
 さらにこれらの円陣は要素(素子)こそ同じか類似であることがほとんどだが組み方によっては魔力の個人差、質や量により変化する。
 おもに戦闘魔術{コンバット}を使用する場面ではこれらの円陣を1から用意するわけにもいかないため、精神内、思考内、あるいはP・Bにストックすることとなる。

Personal Ball <P・B>

現在の魔術でかかすことのできない魔術のツール

 戦闘魔術{コンバット}のみならず、一般的な環和法などによる複数人が同じ魔術を行う場合等には必要となっている魔術による魔術ツールである。
 P・Bは、常時変換{ブロードエディット}するように設定した円陣に自分の魔力にあった自分の分身、精神内、思考内を擬似的に作りあげ、限定的な自分の演算器として使用することになる。
 P・Bは他の魔術にはない「不可視接続{ノンライン}」という特別な性質があり、この性質は魔力そのものの性質といっていい。
 この自己の演算能力を増強するP・Bの能力は当人の魔力量と演算力に依存するため、異変体{バグ}クラスの魔力を持つものでその道に長けたものならば、同時にいくつもの魔術を並列起動できたりもする。ただし、P・Bはその性質上負荷が術者本人に還元されてしまうため、無理な魔術を遣ったり、敵術者からの妨害攻撃{ジャミング}等で命を危険にさらすこともある。なお、若干の対抗策も存在する。
 一部研究者のあいだではP・Bとはむき出しの個人そのものであり、ゆえに複数人でひとつの魔術が演算可能なのだとしている。この説が正しいことを証明するかのように術者に守られていなければ蒸発――厳密にいえば術者へ逃げるように還元――してしまう。
 かつては一部しか遣わなかった「戦闘用の魔術」のための道具{ツール}にならい、別名で<魔術遣いの杖>や<遣い魔>などと呼ぶ者もすくなくなく、性質上<分身{ドッペル}>と呼ばれることもある。
 <P・B>は多少異なる形であれ、世界中でさまざまな発達をしていることもあり、さまざまな呼び名を持つ。

探魔素子 <トレーサー>

「ちいさなP・B」ともいえる感覚増強や拡大、魔術の補助ツールのこと。

 P・Bが時に「分身{ドッペル}」と呼ばれるほど密な関係なのに対して、探魔素子{トレーサー}はそれよりも「つながり」が脆弱であり、しかしそのおかげで自分本体から遠く離したりすることができる魔術の調査や感知に向いた方法である。
 現代において、知識の共有や研究が盛んになり、攻撃魔術そのものの威力も対人においてはもはや過剰なほどの威力があるため、感知というのはとても大事な工程となる。
 P・Bという方法が確立されて以降、思考内演算、精神内演算を意識的に行うということがポピュラーになり、いっそうむずかしくなった敵魔術の検知は最重要といっても過言ではない。
 元来人には「自然感知{N・S}」と呼ばれる魔力に対しての感覚があるが、この探魔素子{トレーサー}はそれを魔術の形で飛ばし、より高度な情報取得を可能にする技法である。
 魔術の形、とは書いたものの探魔素子{トレーサー}には円陣と呼べるほどのものはなく、したがって一般的には魔術の形をとっておらず、小型のP・Bという認識がほとんどをしめる。
 なお、この探魔素子{トレーサー}の基本は自己の延長であるもののP・Bよりも術者とのつながりが強くない。そのため侵入{クラック}されたりすることもあれば、他の魔術遣いに遣わせることもまた可能である。

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