■story
長い髪をまとめながら、彼女はためいきをつく。
「……今日は……あ、そういえば――」
――自分に物事を教えるという立場の人間が館をおとずれるはずだ。
レナ――Renate Armhold(レナーテ・アルムホルト)は、
いつものように館のなかでとくになにもしない日常を送る。
少女にはなにもするべきことがなく、
ただそうするしかない日々ではあったが、
人との関わりあいが得意ではない彼女にしてみれば
経済的に不自由のないその館での日々はけして悪くない。
さて、
少女はまだ予感すらなかったが、
いや、少女だからこそか、
大人たちに、ちいさな
――そんな屈辱と汚辱と、ほんのすこしの悦びが
ある
そう、この日だ。
少女は
知らず、彼女は門にたつ者を気づかれないように眺める。
「なによあれ……男……じゃないのっ」
父から聞いていた話と違う。
同性ならまだしも異性に教わるなど、考えられなかった。
その男は後にレナの前でこう名乗る。
――調教師なのだ、と